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II.特別委員会のコメント
1.規定の趣旨
(1)契約の強制可能性に関する異議申立の権利放棄
EDI技術を利用して商取引をしようとする当事者は、メッセージの交換により有効かつ強制可能な債務関係を設定することを目的としてEDI協定を結ぶのである。一般に、商事契約は不要式契約であるから、当事者が契約締結の意思をもって申込・承諾を行えばよいのであり、通信法は契約の「有効性」に関係ない。契約の有効性は、別の要件に関する問題である。したがって、本条は、当事者間におけるEDI通信により「拘束力のある契約を締結するという意思表示」を規定することが本旨であると考える。また、このような意味において、本条の後段の規定は、むしろ、両当事者間の通信が電子データ交換により行われたという理由のみで「契約の強制可能性に異議を申し立てる権利」を明示的に放棄する旨の合意であると、解釈すべきであろう。
(2)国際商取引にEDIを使用する場合における本条の必要性
しかし、多くの国には、EDIを利用して商取引をしようとする当事者の意図を妨げるような種々の法規制が現実に存在する。例えば、特定の商取引を行うに際しては、通常、契約書などの書面を必要とするほか、一方の当事者あるいは両当事者の署名を必要とする旨の国内法が存在するので、「7.1条準拠法」の規定を検討する場合に、国内法令の選択に特に注意しなければならない。このような法規制が、グローバルな形でEDI取引を行う上での大きな障害となっている。
このため、国連ECE/WP.4、UNCITRAL、EC Commission等の国際機関・国際グループによって、国際貿易におけるこのような障壁を取り除く方法に関する調査・研究が進められている。本条は、国連ECE/WP.4における調査・研究の成果に基づき、「両当事者は、本協定に基づくメッセージの通信によって有効かつ強制可能な債務関係を設定することに合意する。両当事者間の通信が電子データ交換により行われたという理由のみで取引の有効性に異議を申し立てる権利を、両当事者は明示的に放棄する。」旨を規定し、上記の国際機関等による調査。研究の成果を世界の各国が承認し、統一法が制定されるまでの間においては、契約の有効性と強制可能性について、EDI取引を行う当事者がこのような趣旨の意思俵示を交換協定書に明示することを勧告している。

 

 

 

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